長く続ける必要があるか否か
血圧降下剤をはじめて服用すると意外がほどあっけなく下がります。すると、本来的に薬ぎらいな人は「もう血圧が正常に戻ったからこれ以上服用の必要はない」とかってに判断してしまう傾向にあります。薬ですから、副作用の心配もあります。服用をすぐにでもやめたい気持ちもわかりますが、高血圧症はそう簡単に治るものではありません。そのことをまず、しっかり認識する必要があります。
薬は単に高血圧の状態を改善させただけであって、服薬を中止しても、高血圧が再発しないように治療したわけではないのです。
ですから、基本的に高血圧治療は長期間にわたり、血圧を下げた状態を維持する必要があり、したがって服薬も正確に長期間続ける必要があることを知ってください。
一般療法も重要な要素
血圧降下剤の服用によって血圧が下がり、脳卒中や狭心症といった危険をある程度回避することができます。
高血圧の人にとって、酒やタバコ、あるいは塩辛いものは避けなくてはならないものです。ところが、高血圧の人にかぎって、こういった刺激のあるものを嗜好品として愛用していることが多く食事療法を困難にしています。
一般療法は、薬を使用しない療法で、生活改善、食事療法、肥満防止などで、血圧の低下をはかるものです。
血圧の数値で異なる療法
一口に高血圧といっても、数値はさまざまです。
最低血圧が高い人、最高血圧が200をはるかに超えているような人、あるいは最低血圧と最高血圧の差がほとんどない人など、治療はそれぞれのケースに合わせて行われます。
薬による治療を受けている場合でも、一般療法は続けられます。また、その一般療法には、ストレス改善、嗜好品の制限といったものも含まれます。
いずれにしても、速効的に高血圧症が改善されるということはむずかしいので、長期の治療を覚悟しなくてはなりません。
高齢者は一般療法を
問題は高齢者の治療です。
高齢者はすでに動脈硬化が進行していることもあり、このための急激、過剰な血圧の降下はかえって、脳循環障害や狭心症を合併する可能性も無視できません。また高齢者は心拍出量が低下しているのが一般的なので、この際心臓の力を抑制するように働くβブロッカーのような薬は避けるといったように、薬物治療を行う医師の側は慎重な考えをもっています。したがって、緊急性を要する場合以外は、まずしっかり一般療法を行ってこの効果を見定めそのうえ、一般療法のおよばぬ部分に対し徐々に薬物の治療を行います。高齢者の特色として一つだけの病気でなくさまざまの合併症をもっていることも多いのでこの点も考慮されるため治療が慎重になります。