高血圧と高血圧症の違い

高血圧は遺伝する?

 同じような生活環境で生活していても、高血圧の人とそうでない人がいます。この違いはどうしてなのでしょうか。

 本質的には体質が問題なのです。つまり、高血圧になりやすい体質をもっているかどうかなのです。ではこの体質はなにが原因かといいますと、遺伝なのです。

 研究によれば、両親ともに高血圧体質だと、生まれる子どもは60パーセントが高血圧体質だといわれます。片親だけでは、30パーセントです。ただし、この数字は、はっきりしたものではなく、傾向として考えていただければいいかと思います。

 両親ともに高血圧の体質をもっていない場合、5パーセントの子どもが高血圧になる程度です。やはり、なんらか形で高血圧体質は遺伝するようです。

 もちろん、高血圧におちいる遺伝ばかりではありません。環境、食事、精神的な要因、、、といったもろもろの要因が複合的に混じり合って、高血圧は発生します。逆にいえば、たとえ高血圧体質をもっていたとしても、こういった要因に気をつければ、高血圧を未然に防ぐことができるということにもなるのです。

本能性高血圧

 高血圧を起こす特別な病気がないのに、高血圧になってしまう。これを本態性高血圧症といいます。日本では9割の患者さんがこのタイプだといわれています。

 特別な病気がないということは、遺伝やあるいは環境、食事などが有形無形に影響していると考えられます。原因になる病気がないのですから、治療は根気よく血圧を下げていくことになります。

 これに対して、ある病気の結果生じた高血圧を二次性高血圧症といいます。原因は、たとえば腎臓障害、ホルモン異常といったものがあげられます。

 まちがわないでいただきたいのは、あるとき一度だけ血圧をはかり、そのとき高かったからといって、必ずしも病気(症)ではないということです。カーッと興奮すれば、だれでも血圧は上がります。そのとき検査をして、血圧が高かったからといって、高血圧症だとはいえないのです。血圧はたえず変化するものです。高血圧症というのは、通常の場合でも血圧が高い人をいいます。

 血圧はいま述べたように変動があり、個人差があるということで、正常血圧と高血圧の間に明確な境を決めるのにいろいろな研究が行われています。このための指標は生命に対する危険を起こす可能性、さまざま臓器に悪い影響をおよぼすか否かが参考にされます。患者さんの診断に用いる診断の基準がこのようなことがらを参考にして決められています。疫学調査を目的としたWHOの基準では、収縮期血圧140ミリ以下で拡張期血圧95ミリ以下を正常、収縮期血圧160ミリ以上または拡張期血圧95ミリ以上を高血圧、両方の間を境界域としています。1984年の米国の臨床用の基準は拡張期血圧90ミリ以上、また、収縮期のみで160ミリ以上を高血圧としていて簡単です。

恐ろしい悪性の高血圧

 高血圧そのものによって死亡することなどまずない、と考えられがちですが悪性の高血圧症の場合は、死亡の危険がともないます。

 高血圧の合併症としては、脳卒中、心不全といったものがあります。高血圧症が長く続くとこういった合併症状があらわれます。しかし、普通は穏やかな形で症状が進行します。ところが、悪性の高血圧症の場合は、急激に症状が進行してしまうのです。

 では、悪性であるか良性であるか、どこで区別したらいいのでしょうか。

 次のような特徴がありますから、調べてみてください。

 ①歳が若いのに高血圧である。
 ②最低血圧の数値が異常に高く、130~140ミリ以上になる。
 ③尿にタンパク、血液が混じる。
 ④高血圧が原因で頭痛が発生する。
 ⑤眼底異常
 ⑥腎臓障害により腎臓機能が著しく低下する。
 ⑦循環系の異常、心不全の傾向がみられる。

 などです。腎臓機能の低下や心不全は直接死にいたる危険性が高いだけに、十分に注意してください。

原因がはっきりしている高血圧

 本能性高血圧に対して、高血圧を起こす病気の結果生じた高血圧を二次性高血圧といい、この場合は原因になっている病気を治療することによって、必然的に高血圧も解消されます。

 高血圧と診断された場合、あるいは自分が高血圧であると自覚している場合、本能性のものかそれとも二次性のものかを判断する必要があります。なぜならば、二次性の場合、単に血圧降下剤を飲んだだけでは、根本的な治療にはならないからです。

 二次性高血圧を起こす原因として、腎臓の異常、内分泌系の異常、神経性のもの、薬物によるもの、心臓血管の異常、、、などがあります。

 腎臓機能が低下すると、ナトリウムや水の排泄が障害され体液量が増加することがいちばんの原因と考えられています。また腎に流れこむ血液の量が減ると腎の内部よりレニンという昇圧性のホルモンが分泌され高血圧の原因になります。

 内分泌系の異常による高血圧には、副腎、下垂体、甲状腺などより昇圧性のホルモンが異常に分泌されたために起こるものです。とくに副腎のホルモン産生腫瘍などで起きることが多く、このような場合の高血圧の治療は腫瘍の摘出手術になります。

 神経性の高血圧の原因としては、脳腫瘍や脳卒中、脳炎後遺症、脊髄の病気等の結果生じたもので、二次性高血圧の原因としては普通、ストレス等の精神神経の酷使の状態はこの仲間に入れません。

 女性の場合は、妊娠中毒症によっても高血圧が発生します。とくに、妊娠後半期にみられ、ひどい場合はけいれんなどを引き起こします。妊娠中ですからクスリの使用が制限されます。妊娠中毒と高血圧の関係はまだはっきりとはわかっていません。

 口径避妊薬によっても高血圧が引き起こされるとの報告もあり、注意が必要です。これは薬剤性二次高血圧の一つです。

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